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  • 順市

高尿酸血症 ~隠れた心血管病のリスクファクター~


・血液中の尿酸の値が増えすぎてしまった状態。尿酸値7.0㎎/dlを超えたら高尿酸血症。

・整形外科の医師も内科の医師も少なからず関わる病気です。

高尿酸血症が原因となる痛風性関節炎⇒整形外科

 心血管病・慢性腎臓病のリスクとしての高尿酸血症⇒内科


◎原因

・尿酸値が高くなる原因として知られている “プリン体”

“プリン体”は、しらこ、レバーなどに多く含まれ、いわゆる“うまみ”を生み出す成分の一つであるた

 め、うまいものには“プリン体”が多く含まれます(図1)









“プリン体”は、食事で摂ると、もちろん体内で尿酸を作り出す原因となりますが、実は、食べ物由来 

 の“プリン体”は、体内に尿酸を作り出す原因の2割でしかなく、残りの8割の“プリン体”は新陳代謝

 で生成され、結果、それらが合わせて肝臓において尿酸に合成されます(図2)

 ある程度合成されても、それらがきちんと排泄されればよいのですが、高尿酸血症の人の約9割は、  

 尿酸の排泄(尿・便から)が悪いとされます。


尿酸の排泄を悪くする原因にアルコール摂取過剰などもありますが、主な原因は「肥満」と「体質」  

 です。肥満になると体内で血糖を処理する「インスリン」が余りがちになるが、インスリンは尿酸の

 排泄を邪魔する方向に働くので高尿酸血症になりやすくなります。


・最近ではショ糖や果糖(フルクトース)の代謝過程で尿酸値が上昇し痛風発作のリスクが増加する

 ことが解っています(悪者はプリン体だけではないのです)。

高尿酸血症は、*飲んでいる薬(*例えば利尿剤、抗ガン剤)が原因になることや、腎臓の働きが悪 

 いことも原因となり得ます。


◎高尿酸血症が引き起こす病気(図3)


①高尿酸血症の状態が長く続くと身体のあちこちに尿酸の結晶が沈着します。

 A:痛風関節炎

 ・風が吹いても痛い(痛風の名の由来)。

 ・症状が出てから一日以内にピークに達する。

 ・一度に一つの関節だけ。

 ・関節が赤く腫れている。

 

 B:痛風腎

  ・痛風の原因である尿酸結晶が腎臓に沈着することにより生じる間質尿細管性腎炎

 

 C:尿路結石

  ・尿酸結晶でできた石が尿の通り道である尿管にひっかかり、尿の流れを滞らせると同時に激しい

   痛みを起こす。


②高尿酸血症の人は高血圧や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の高い人)、糖尿病などの生活習 

 慣病や慢性腎臓病を合併しやすいことがわかっています(約80%)


 高尿酸血症はこれらの疾患と密接に関係し放置しておくと動脈硬化を進行させ、

 D:心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクを高めるといわれています。


 尿酸の結晶が腎臓に沈着して起こる痛風腎による腎障害だけでなく

 E:尿酸血症直接の作用により腎臓の働きが低下することがあります。 ◎尿酸は悪人?善人?


<良い面>

尿酸は飢餓時代、寒冷時代の生き物を守ってきました。尿酸には果糖(フルクトース)を脂肪化する

 働きがあり、肥満が飢えや寒さから身を守るのに役立っていました。

・尿酸には抗酸化作用(老化に抗う力)があります。


<悪い面>

飽食の時代における肥満の助長とそれによるメタボリックシンドロームの発症

動脈硬化における血管に対する直接的、間接的作用 ⇒ 心血管病、脳血管疾患、慢性腎臓病の原因

尿酸沈着による障害(痛風関節炎、痛風腎、尿路結石


 *もともとは生体の防御物質としての役割を持つ善人だったのに、今の飽食の時代には悪人になって   

 しまったのですね。


◎治療

・方法の如何を問わず尿酸を6.0㎎/dl以下に保つことが大切です。


〇尿酸値を6.0㎎/dl以下に保つ理由

尿酸は低温になるほど溶けにくく結晶になりやすい性質があります。

 人間の体は、手足などの末端になるほど体温が低くなるため、尿酸値が高い人は、手足などの  

 関節に、血液中で溶けきれなくなった尿酸が結晶となって溜り、痛風発作を起こしやすくなります。

尿酸が身体の中で結晶にならないように、尿酸値は平熱の溶解度を下回る濃度、すなわち6.0㎎/dl以

 下を目指すのが良いとされています。

 尿酸を6.0㎎/dl以下に保つと、体内に沈着している尿酸の結晶が溶け出し、痛風発作や合併症

 リスクが減ることになります。

 したがって尿酸値は6.0㎎/dl以下を目標に*ゆっくり下げ、目標値まで下がったらその値を維持する 

 ことが大切です。


*なぜゆっくり下げるのか?急激に下げると固着していた尿酸結晶がはがれ、痛風発作や尿路結石を 

              かえって起こしやすくなるからです。



*下げすぎはどうなる?糖尿病の患者の尿酸値が4.9㎎/dl以下で心血管病発症率が上昇するという 報告があります。

その理由は尿酸の持つ良い面であった抗酸化作用し、血管が障害され動脈硬化を招来するためです(Jカーブ現象)。




ビタミンCは果糖の脂肪化を抑制し、抗酸化作用も有するので摂取は有用です。


〇尿酸値を6.0㎎/dl以下に保つためには

生活習慣の改善(尿酸を上げる要因を減らす)

食事療法、運動療法、飲酒制限

尿酸値を下げる生活習慣は、他の生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)も併せて改善してくれ

 ます。

                    👇

   1、食べ過ぎ注意(肥満の解消に努める)

      食事は適正な量に抑え、プリン体の量を意識することも忘れずに

   2、甘未飲料や果物ジュースではなく、水やお茶を飲む

   3、アルコール摂取はほどほど

   4、適度な有酸素運動を継続的に

   5、一日2~2.5リットルの水分をとる(飲水+食べ物の水分の合計)

 

薬物療法(尿酸降下薬により尿酸を下げる。ただし痛風発作時には原則投与しない

   

   1、尿酸合成阻害薬:肝臓における尿酸の合成を阻害することで尿酸値を下げる

    最近のものは、腎臓障害を気にせず使用でき、むしろその改善作用も期待できる。

   2、尿酸排泄促進薬:腎臓からの尿酸の排泄を増やすことで尿酸値を下げる

    尿路結石のある患者さんには原則使わない。肝臓、腎臓障害のある患者さんは注意して服用。

    最近は軽度であれば肝障害のある患者さんにも使いやすいものも出てきている。

   3、薬は3医師や薬剤師の指示に従い正しい飲み方で飲む

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