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順市

循環器の検査について

循環器科とは、主に心臓の病気(虚血性心疾患、不整脈、心臓弁膜症、心不全など)や、高血圧症、動脈硬化症を中心に診断、治療する科です。また、これらに関連の深い、糖尿病や脂質異常症、メタボリックシンドロームも意識して診察を行います。


そのような中で、病気の診断・治療につなげるための各種検査は非常に重要な位置を占めます。

そこで、それら循環器診療の中で行われる検査について、今後2回にわけて紹介したいと思います。

今回は、まず1回目として、クリニックのレベルで行われる主な循環器の検査について解説します。


A,クリニックで可能な循環器の検査


①聴診


診察の基本であり、循環器科としては、聴診において心臓の雑音の有無、心拍動のリズムの乱れなどに

注目します。

例えば、心雑音は心臓弁膜症、先天性心疾患、リズムの乱れは不整脈の察知につながります。


対象の症状・循環器疾患:胸部症状全般。心臓弁膜症の察知。先天性心疾患の察知。不整脈の察知。心不全からくる肺音の異常の指摘

②血圧


血圧の数値を測定し、基準値よりも高ければ高血圧症、低ければ低血圧症の診断につながります。

また測定時に脈の乱れがあれば不整脈の可能性を察知できます。

対象の症状・循環器疾患:高血圧由来のぼせ・肩こり・頭痛など。低血圧由来のふらつき、めまい、失神など。高血圧症・低血圧症の診断。不整脈の察知。

③胸部レントゲン


一般的に胸部のレントゲン写真は肺の状況を知るためにのみ施行されると思われがちですが、循環器的には心臓の形や大きさ、心臓の負担からくる肺のうっ血などの把握、大動脈の走行の様子を知るのに有用です。

また胸部症状の原因が循環器の病気とは限らないため他の疾患の鑑別(肺など)にも有用です。

対象の症状・循環器疾患:動悸、胸痛、息切れなど胸部症状全般。

心拡大・心肥大。心不全。胸部の大動脈瘤。



④心電図


循環器検査を行う際に“必ず通る”という意味で“循環器検査の入り口”ともいえる検査です。

心臓は、拍動するのに生体の電気の流れが必要なのですが、拍動時の電気的興奮を波形として記録するものです。

心電図検査の歴史は長く、約118年前に発明されたものですが、患者さんに大きな負担(痛み、放射線被ばく)をかけることなく実施することが可能で、すぐに波形記録を確認でき、かつ得られる情報量が多いことからいまだに第一線の循環器検査として活躍しています。

現在、一般的に行われる心電図検査は12誘導心電図といい1枚の心電図記録には12種類の波形が記録されます。12種類もの波形を記録する理由は、心臓を流れる電気興奮を12の方向から観察し、直接的ではないものの全心臓の体像をしっかりと把握するために非常に有用です。

対象の症状・循環器疾患:動悸、胸痛、息切れなど胸部症状全般。

心臓疾患全般、不整脈、心筋梗塞の診断、心拡大・心肥大の察知。心筋疾患の察知。

虚血性心疾患の察知。

⑤運動負荷心電図(負荷方法として階段や自転車漕ぎ・ベルトの上の走行するものがあります)


通常の心電図は、電気信号を使って間接的に心臓の状況を把握するという特性上、異常所見があるからといって必ずしも問題があるわけではないことも多いのですが、逆に異常所見がなくても実は心臓疾患の存在を反映しきれていないこともあります。

たとえば狭心症や不整脈などは安静時や発作のない時は正常所見を示すことも多いのです。


そこで、動悸や胸痛などの自覚症状が時々あるのに心電図に問題がない場合、運動してもらって心電図をとるのが運動負荷心電図です。

安静時の心電図だけではわからない心臓の病気を見つけるのに役立ちます

運動負荷により不整脈や心電図上の特徴的な※虚血変化(心臓の血のめぐりの低下)が誘発された

場合、不整脈や狭心症の診断につながります。

対象の症状・循環器疾患:労作による胸痛、息切れ。心電図異常。労作性狭心症。不整脈。


⑥心臓超音波検査(心エコー)


超音波を胸の心臓の位置にあてることで、心臓の動き、構造を画像として直接的かつリアルタイム

みることができます

心臓の持病のある方は定期的に受けることにより、自分の心臓の異常に関する現在の状態や変化を把握することができます


対象の症状・循環器疾患:心疾患全般。特に心筋梗塞・狭心症。

心臓弁膜症。また、心電図異常のある人、

心臓病が隠れていることの多い高血圧、脂質異常、糖尿病の人への施行も有用です。



⑦ホルター心電図

心電図を測定できる小さな機械を体に取り付け、一日中(24時間)普段通りの生活をしながら連続して心電図を測定します。いつおこるかわからない、診察室だけではわからない心臓の発作的な症状の原因を捕まえ、突き止めるのに役立ちます。

すでに狭心症や不整脈の診断のついている患者さんにおいても定期的に施行することにより、再発や増悪の察知に役立ちます。


対象の症状・循環器疾患:動悸・脈の抜け。胸痛。失神。狭心症。不整脈。


⑧血圧脈波検査

血圧を計測する要領で両腕、両足首に駆血帯を巻き、血圧と同時に脈の波形を測定しその伝わり方の速度から年齢に比した血管の固さの度合いを間接的に推計します。また両腕、両足の血圧の比から脚の血管の詰まりの度合いを間接的に推計します。


対象の症状・循環器疾患:歩行時の足の痛み、しびれ。

下肢閉塞性動脈硬化症など


⑨頸動脈エコー


超音波の位置にある頸動脈にあてることで、脳へつながる大事な血管である頸動脈の壁の厚さ

血管の内側の状態がわかります。

画像により直接的に動脈硬化によって厚くなった血管壁やこびりついたプラーク(コレステロールの

溜り)や血栓などを確認することができます。

また、血管の狭窄率(狭さ)を評価をすることができます。壁にこびりついたプラーク部分の面積と、血液の流れる部分の面積の比率を計算して出します

対象の症状・循環器疾患:内頚動脈狭窄症(それによるふらつき、立ち眩み)


⑩血液検査


〇心臓の特異的マーカー


心筋トロポニンT:心臓の筋肉の障害の有無を調べる血液マーカーです。心電図と合わせ測定するこ とで、急性期の心筋梗塞の診断をより確実とすることができます。また、心筋が障害されるような の心臓(心筋)疾患の補助診断にも役立ちます。


対象の症状・循環器疾患:胸痛。心筋梗塞・狭心症。心筋症。


BNP・NT-proBNP:心臓に負荷がかかった際に心臓自らが分泌するホルモンをマーカーとして測定し ます。

対象の症状・循環器疾患:息切れ、動悸、浮腫(心不全の症状)。心不全。


〇心臓疾患のリスクファクターに対する採血検査


・例えば、糖尿病(血糖値、2カ月の平均血糖値を表すHbA1cなど)。脂質異常症(総コレステロー ル、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪など)。高血圧症(尿による一日食塩摂取 量、他に原因のある高血圧におけるホルモン検査(副腎から分泌されるアルドステロン、腎臓から分 泌されるレニンなど)


対象の症状・循環器疾患:心臓疾患全般。動脈硬化症。高血圧。


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